フォーラム 「2022年マレーシア総選挙――イスラム主義、連邦・州関係、マレー王家」
「2022年マレーシア総選挙――イスラム主義、連邦・州関係、マレー王家」 山本博之(京都大学)
2022年11月19日にマレーシアの国会(連邦議会) の総選挙が行われた 。前回の2018年総選挙では与党連合・国民戦線(BN)が野党連合・希望連盟(PH)に破れ、希望連盟の一員であるマレーシア統一プリブミ党(PPBM)のマハティール・モハマドを首相とする政権が誕生した 。しかし国会議員の政党移籍の噂が飛び交って政権が不安定化し、新型コロナウイルス感染症流行のため国会を開催して各議員の所属政党を確認することができない状況で、2020年3月、PPBMが希望連盟を脱退して国民戦線と組み、PPBMのムヒッディン・ヤシンが首相に就任した。その後2021年8月にムヒッディンから国民戦線の中核政党である統一マレー人国民組織(UMNO)のイスマイル・サブリ・ヤアコブに首相が交代した。こうして2018年総選挙から4年足らずの間に、希望連盟は選挙を経ずに政権の座を追われ、かわりにUMNOが与党の座に返り咲いた。
有権者の年齢が21歳から18歳に引き下げられ(2021年12月15日実施)、国会議員の政党移籍を禁止する法律が施行された (2022年10月5日施行)後に行われた2022年総選挙では、与党陣営がUMNOを中心とする国民戦線とPPBMを中心とする国民同盟(PN)に分かれ、そこに政権奪回をはかる希望連盟が加わって三つ巴の戦いになった。ただしこの3つの政党連合はいずれも単独で過半数を取ることはなく、他の政党や政党連合と組むことになると見られていた。連携相手の候補となるサラワクとサバの地域政党は、長く国民戦線と連携してきたが、2018年以降は国民戦線以外の政党連合とも連携するようになっており、この選挙では連携相手をどのように選ぶかが注目された。
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2023年1月30日公開
日本マレーシア学会(JAMS)